美術館で開催される展覧会、それを企画するのがキュレーターです。彼らは、チラシやポスターやチケットのデザインを誰に頼むか、時として、展覧会の内容以上に頭を悩ませます。なぜなら、それによって展覧会がどう伝わるかという「方向性」が決まるからです。また、展覧会が一過性のイベントであることを免れえないのに対して、それとあわせて刊行されるカタログ(本)はものとして残り続け、未来において、展覧会の印象はカタログに大きく左右されることになります。
つまり、展覧会に対する責任というものを考えた場合、じつのところ、キュレーターと同じくらいの重さがデザイナーにもあると言えるわけです。それゆえに両者の関係は(とりわけキュレーターが自分の役割を実際以上に重いものと考えている場合には)「難しい」ものとなります。本来、デザイナーもキュレーターも、言葉になっていないものを誰かに向かって伝えることを仕事にしている点においては同じような仕事なのですが……いや、だからこそ両者の関係は「複雑」になるのかもしれません。でもそれだけに面白いとも言えますね。
デザイナーの菊地敦己さんとキュレーターの保坂健二朗さんは、現在東京国立近代美術館で開催中の「高松次郎ミステリーズ」展 で協働しています。今回は、高松次郎(1936-1998)の作品世界を「謎解き」しながら進む回顧展を出発点にして、ふたりの経験を通して考える「デザイナーとキュレーターの関係の面白さ」について率直に語ってもらいます。
デザイナーやキュレーターという仕事に興味がある人、展覧会の舞台裏に興味がある人、なにかとなにかとの間にブリッジをかけたいと思っている人などに興味深い話となるのではないでしょうか。
ちなみに、菊地さんはオルタナティブ・ブックレーベルBOOK PEAKを主宰していて、そこで発行している『凶区』という雑誌に保坂さんが連載を持っています。それゆえ、当日の話は、「アートとデザインと社会について」あるいは「アートと批評と本について」など、ちょっとディープなテーマへと脱線していく可能性も…!
【プロフィール】
菊地敦己
グラフィック・デザイナー、アート・ディレクター。美術大学の彫刻科在学中から、コンテンポラリーアートのプロデュースやグラフィックデザインの仕事を始める。デザインに関わった展覧会に、横浜トリエンナーレ2008、「エルネスト・ネト展」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、2007年)、「小金沢健人 あれとこれのあいだ」(神奈川県民ホール、2008年)、「ペーター・フィッシュリ ダヴィッド・ヴァイス」(金沢21世紀美術館、2010年)など多数。青森県立美術館(設計:青木淳)のVI計画、軽井沢千住博美術館(設計:西沢立衛)のVI計画、七ヶ浜中学校(設計:乾久美子)のサイン計画など、建築家との協働作業も数多い。
保坂健二朗
東京国立近代美術館主任研究員。勤務先の美術館で企画した主な展覧会に「エモーショナル・ドローイング」(2008年|服部一成)、「建築がうまれるとき ペーター・メルクリと青木淳」(2008年|山田拓矢)、「イケムラレイコ うつりゆくもの」(2012年|中島英樹)、「フランシス・ベーコン展」(2013年|下田理恵 *カタログのみ)、「高松次郎ミステリーズ」(2014年|菊地敦己)などがある(括弧内の人名は協働したデザイナー)。主な著書に『アール・ブリュット アート 日本』(共著・監修|平凡社、2013年)など。『すばる』や『朝日新聞』で連載を持ち、『芸術新潮』などにも寄稿している。
※イベントチケットの予約・購入に関するご案内はこちら。
2015/01/22 Thu -
菊地敦己×保坂健二朗「デザイナーとキュレーターの『複雑』な関係」展覧会「高松次郎ミステリーズ」スピンオフ
- 07/16 Wed 三宅陽一郎×清木昌
「ゲームデザイン、人工知能、数学――レトロゲームから未来まで」
『数学がゲームを動かす!』
(日本評論社)刊行記念 - 07/18 Fri 阿部恭子×インベカヲリ★
「家族という密室で何が起きているのか」
『近親性交―語られざる家族の闇』(小学館)刊行&重版記念 - 07/19 Sat 滝口悠生×佐々木敦
「ことばの即興力
ーーいかに書き進めていくか?」
『「書くこと」の哲学 ことばの再履修』
(講談社)刊行&重版記念 - 07/20 Sun フィクショネス 文学の教室
『怪談』を3ヶ月かけてじっくりと読む - 07/21 Mon 沢山遼×山本浩貴×岩渕貞哉
「岡﨑乾二郎、そしてモダニズムをいま、考える」
『美術手帖 2025年7月号 特集「岡﨑乾二郎」』(美術出版社)刊行記念 - 07/22 Tue 周司あきら×杉田俊介
「語られにくいミサンドリー(男性嫌悪)から『男』の話をしよう」
『ラディカル・マスキュリズム』(大月書店)
『男性学入門』(光文社)W刊行記念 - 07/23 Wed 椎名基樹×せきしろ
「バカサイトークライブ」 - 07/24 Thu 米澤渉×ひろのぶと株式会社
「踊る阿呆たちの本づくり」
『踊る阿呆の世界戦略』(ひろのぶと株式会社)
刊行記念 - 07/26 Sat 水上文×清水晶子
「ここにも、そこにも、どこにでも:日本語圏と英語圏のクィアポリティクスを辿って」
『クィアのカナダ旅行記』(柏書房)刊行記念 - 07/27 Sun 太田充胤×山本ジャスティン伊等×山本浩貴
「こんなにも踊りたい、私たちの魂について」
『踊るのは新しい体』(フィルムアート社)刊行記念 - 07/28 Mon 金原ひとみ×朝吹真理子×山中瑶子
「韓国と出会って考えたこと」
新文芸誌『GOAT meets』(小学館)刊行記念 - 07/29 Tue 枝優花×平井珠生
「ラジオでしゃべるって、こんなにむずかしくて、たのしい。」 - 07/30 Wed 梶原阿貴×高橋伴明
「家族とジェンダーと革命」
『爆弾犯の娘』(ブックマン社)
刊行記念 - 07/31 Thu 奥田知志×永井玲衣
「わたしたちの社会はさみしいのか?」
『わたしがいる あなたがいる なんとかなる 「希望のまち」のつくりかた』(西日本新聞社)刊行記念 - 08/03 Sun 今野晴貴×内田良 「残業代、請求できます!部活、なくなります!激変する学校教育の今」『教育現場における「定額働かせ放題」の終焉』(堀之内出版)刊行記念
- 08/04 Mon 古賀及子×菊地朱雅子×北野太一×油利可奈
「生活を(書き)続けるために」
『巣鴨のお寿司屋で、帰れと言われたことがある』(幻冬舎)
『おかわりは急に嫌 私と『富士日記』』(素粒社)
『よくわからないまま輝き続ける世界と 気がつくための日記集』(大和書房)刊行記念 - 08/06 Wed 金子玲介×長井短
「同時代を生きる、書き手たち」
『流星と吐き気』(講談社)刊行記念 - 08/07 Thu 旦木瑞穂×古田雄介
「親の介護 する? しない?」
『しなくていい介護』(朝日新聞出版)刊行記念 - 08/09 Sat 桜林直子×植本一子
「少しだけ、違う視点を手に入れる」
『つまり“生きづらい”ってなんなのさ?』(光文社)
『ここは安心安全な場所』W刊行記念 - 08/10 Sun 高田漣×いとうせいこう
「サンプリングする小説、オルタナティブな文学」
『街の彼方の空遠く』(河出書房新社)刊行記念 - 08/11 Mon 豊﨑由美×宇野和美
第94回「読んでいいとも! ガイブンの輪」 - 08/13 Wed 小島雄一郎×吉田将英
「拗らせたおじさん二人が考える『選べない』時代の生き方」
『「選べない」はなぜ起こる?』(サンマーク出版)刊行記念 - 08/18 Mon 青山美智子×新井見枝香
「スイート&ビター。だから人生は美味」
『チョコレート・ピース』(マガジンハウス)刊行記念 - 08/30 Sat コナリミサト×武田真治
「スナックバブル in B&B」
『凪のお暇』(秋田書店)完結・12巻刊行記念 - 08/31 Sun 小川公代×中村隆之
「この世界を生きるための物語と音楽」
『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』
『ブラック・カルチャー』(岩波書店)刊行記念