前回は、師走も押し迫った日にかかわらず満員御礼、聴講にいらした方々も本格読書人そのもののまさに白熱講義でした。
南北分断という激動の歴史を色濃く反映する韓国現代文学は、ますますきな臭くなってきている日本と世界のこれからをまるで予見しているようです。
新年第一回目は、「CUON韓国文学の名作」の第1巻、世紀を越えて読まれ続けるロングセラー、『広場』(崔仁勲=チェ・イヌン、吉川凪訳、クオン)を読みます。
『広場』は、朝鮮戦争停戦後、「釈放捕虜」と呼ばれる身分の主人公が、腐敗した南に留まることも硬直した北への帰還も拒み、第三国行きを希望。しかし、それによって彼は自由になれるのか、何を手にすることができるのか……分断された社会の本質に迫り、その対立の狭間で葛藤し続ける人間を描く物語です。
作者の崔仁勲は、朝鮮半島の北部に生まれ、朝鮮戦争が始まった年に一家で南へやってきた、南北分断を身をもって知る作家です。
その代表作である『広場』は50年代と60年代の両方にまたがって意味を持ちます。一つの視点は、「日本が朝鮮戦争をどうとらえたか」。これは堀田善衛の『広場の孤独』という小説を参照することで考察してみたいと思います。
もう一つの視点は「4・19学生革命と日本の60年安保」。実は深い水脈で日本ともつながる部分があるのです。それはいったいどういう部分なんでしょうか。そんなに分厚くない本です。あらかじめ読んでいただければベストですが、もちろん読んでいなくてもOKですよ。
『広場』は、こちらに「試し読み」や「序文一覧」がありますので、ご参照ください。
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/1442
以降、『1945、鉄原』(イ・ヒョン)、『生姜』(チョン・ウニョン)、『外は夏』(キム・エラン)、『フィフティ・ピープル』(チョン・セラン)、『娘について』(キム・ヘジン)、『ショウコの微笑』(チェ・ウニョン)などを取り上げる予定です(変更あり)。
【出演者プロフィール】
斎藤真理子(さいとう・まりこ)
1980年に大学のサークルで朝鮮語の勉強を始め、91~92年にちょこっとソウルに語学留学。韓流ブームには完全に乗り遅れてました。ながーいブランクのあと、『カステラ』(パク・ミンギュ著、ヒョン・ジェフンとの共訳、クレイン)で第1回日本翻訳大賞。訳書『こびとが打ち上げた小さなボール』(チョ・セヒ、河出書房新社)『誰でもない』(ファン・ジョンウン、晶文社)『フィフティ・ピープル』(チョン・セラン、亜紀書房)、『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ、筑摩書房)、『短篇集ダブル サイドA」「短篇集ダブル サイドB」(パク・ミンギュ、筑摩書房)、 責任編集を務めた『韓国・フェミニズム・日本』(河出書房新社)など。韓国を楽しみ・味わい・語らう雑誌『中くらいの友だち』(韓くに手帖舎・皓星社)創刊メンバー。
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