ぼくはここ数年で、写真の価値やおもしろさを伝えるには作品をつくっているだけでは足りないと思うようになりました。
きっかけは震災以降に、津波に流された写真を持ち主に返す活動に深く関わったことです。その後、活動の中で数多く出てきたダメージが酷く捨てられそうだった写真を、そのまま捨ててしまうのではなく多くの人に見てもらうことでコミュニケーションを生むための「LOST&FOUND
PROJECT」を立ち上げ、数年かけて東京、ロサンゼルス、ニューヨーク、メルボルン、北海道、サンフランシスコ、ローマ、コルーニャ、大邱、ボストンと巡回し、その経験を本にまとめて伝えていくということをやってきました。
そして最近、『ほぼ日刊イトイ新聞』と一緒に、「写真はもっとおもしろがれる!」というwebと連動したイベントを企画しました。そこでは数名の写真家にインタビューをし、「LOST&FOUND PROJECT」の展示と写真集書店という場をつくり、トークイベントやワークショップやビブリオバトルを開催しました。
http://www.1101.com/munemasa_photo/index.html
そうやって作品をつくることとは別の写真との関わり方をすることでやっと、写真家としての自分が撮るべき写真に確信を持つことができるようになっていきました。
そんな中で見えてきた写真の集大成が『石をつむ』という本です。この本は、自費出版という形にすることで制作から流通まで、自分の責任で動いています。ここ数年で経験したこと、知ったこと、誰かに伝える意味のあること、全部入っています。
写真家には撮影をして作品にしていく時間も大切ですが、それと同じくらい自分が向き合っているものに対して考える時間も大事なのではないでしょうか。ぼくは写真家と非写真家の間を行き来したことで、やっといい写真家とはこういうものです、というものが理解できました。そんな写真にまつわる話と、写真集の制作や流通といった具体的に作品を伝えるための話をしていければと思います。
写真家 高橋宗正
http://www.munemas.com
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同い年の高橋宗正さんとは、昨年も一度、このようなイベントを行っています(https://bookandbeer.com/wp1/blog/event/20140322_a_tsunami/)。彼と写真について話をするのは、いつもおもしろい。
「LOST&FOUND PROJECT」が忙しくなると、彼はほとんど写真を撮っていないようでした。けれどそういう時にあっても、彼はそれらの写真について誰よりも深く考えて行動していた。撮っていなくても写真家である、ということがあり得るのだと、ぼくは思いました。けれど一方で、それは誰が見ても純粋に写真家であるという感じでは、さすがになかったでしょう。
一方、ここ10年くらいで、携帯電話やスマートフォンの普及で、誰もがカメラを持ち歩くようになりました。そこから、ときに世界中の人をクスっと笑わせるような写真や、どこの報道機関よりも早く事件の真実に迫った写真などが、SNSの普及によって瞬時にシェアされるようになりました。それを撮った人たちは、写真家であるということになるのでしょうか。
そして彼はこのたび、『石をつむ』という写真集をつくりました。誰がどう見ても、写真家としての彼の、新作の写真集です。その写真集のとある部分を指してぼくは彼に、世の写真家はもっとこれをやるべきだということが言いたかったのではないか、とたずねました。彼はうなづきながら、そういう側面もある、と控えめに言いました。
ブック・コーディネイター 内沼晋太郎
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2015/06/13 Sat -
高橋宗正×内沼晋太郎 「写真家と非写真家のあいだ」
- 04/03 Thu 木村祥一郎×藤原隆充
「遠まわりをした老舗家業の働き方」
『ちいさな会社のおおらかな経営』(主婦の友社)刊行記念 - 04/04 Fri 北村浩子×マライ・メントライン
「“日本語は難しい”と日本人は言うけれど? 」
『日本語教師、外国人に日本語を学ぶ』(小学館)刊行記念 - 04/05 Sat 清田隆之×大島育宙「正しさの一歩外で考える、「俺たち」と「恋愛」の現在地」『戻れないけど、生きるのだ 男らしさのゆくえ』(太田出版)刊行記念
- 04/06 Sun 栗田隆子×武田砂鉄「「働けない人」と「働けた人」で考える──わたしたちの社会と労働のいびつな関係」『「働けない」をとことん考えてみた。』(平凡社)刊行記念
- 04/07 Mon 藤原ヒロシ×皆川壮一郎×嶋浩一郎
「無駄と余白と奥行きと」 - 04/09 Wed 藤澤ゆき×石田真澄×野村由芽
「手を動かしながら生きていく」
『わたしを編む つくる力を、手のうちに YUKI FUJISAWA制作日記』刊行記念 - 04/10 Thu 藤津亮太×前島賢
「頼まれなくたって、語ってやる!」
『富野由悠季論』(筑摩書房)刊行記念 - 04/11 Fri 宮崎晃吉×川口瞬×内沼晋太郎
「これからの小さな出版と、本の届け方」
『最小文化複合施設』(HAGISO)出版記念 - 04/12 Sat きださおり× 明円卓 × 藤井颯太郎
「What shall we do here? この場所で何するナイト」 - 04/13 Sun 安達茉莉子×長島有里枝
「リアルライフでフェミニズムを生きるわたしたち」
『あなたのフェミはどこから?』(平凡社)刊行記念 - 04/15 Tue 西寺郷太×高橋芳朗「J-POP丸語り」『J-POP丸かじり』(ソウ・スウィート・パブリッシング)刊行記念
- 04/17 Thu ゲッツ板谷×新保信長×原カントくん
「自分のことってどう書けばいいのか? 」
『ともだち』(徳間書店)刊行記念 - 04/18 Fri 土佐有明×石川浩司×蔦木俊二
「イカ天とバンドを続けることとあの頃の話」
『イカ天とバンドブーム論』(DU BOOKS)刊行記念 - 04/20 Sun フィクショネス 文学の教室
『金閣寺』『美しい星』を
3ヶ月かけてじっくりと読む - 04/20 Sun 金川晋吾×柴崎友香×小田原のどか
「80年目、爆心地・長崎の写真と言葉」
『祈り/長崎』(書肆九十九)刊行記念 - 04/21 Mon 甲谷 一×佐藤浩二
「プロデザイナーが考える
“ロゴデザイン”のちょっと深い裏話」
『カンタンでちょっぴり深いロゴづくり』
(エムディエヌコーポレーション)刊行記念 - 04/23 Wed 鈴木涼美×紗倉まな×原カントくん
「動物になりきれない、愛しい人間たちの“欲望”」
『ノー・アニマルズ』(ホーム社)刊行記念 - 04/25 Fri とれたてクラブ×ゆっきゅん×潟見陽「こういう物語をずっと待ってた」『なかよしビッチ生活』(エトセトラブックス)刊行記念
- 04/26 Sat 少年アヤ×なま×野口理恵
「なにでもないわたしでいられますように」
『わたくしがYES』『USO 6』『生きる力が湧いてくる』トリプル刊行記念 - 04/30 Wed 古舘佑太郎×又吉直樹
「旅と文」
『カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記』(幻冬舎)刊行記念