かつての高度経済成長時代を支えた「行商のおばちゃん」。その後のモータリゼーションの浸透と輸送技術の発達で、「行商」という小商いはすっかり見かけなくなりました。とりわけ、行商人専用の車輛を編成して運行される「行商列車(鮮魚列車)」は、かつては各地方で見られたものの、現在では近鉄大阪線を残すだけとなっていて、鉄道マニアでもなかなかお目にかかれません。
実は行商のおばちゃんが運んだのは、鮮魚ばかりではありませんでした。行商人は、よその土地の情報をもたらす「客人(まれびと)」でもあったし、また、伊勢地方の行商人たちが専用の鮮魚列車を仕立てて「カンカン(ブリキカン)」で毎朝運んでくる鮮魚は、「産地直送」という概念をはぐくみ、大阪の大衆の魚食文化を支えました。行商人は単なる小規模な移動販売以上の、地方文化を根底から支える存在だったのです。
本書『行商列車 〜〈カンカン部隊〉を追いかけて〜』は、気鋭の“旅の民俗学者”山本志乃さんが、伊勢地方の近鉄大阪線と鳥取地方の因美線(すでに行商列車を廃止)の行商人たちへ(事実上最初で最後の)取材を敢行した、唯一無二の探訪記です。そして本書の刊行を機に、『小商いのすすめ』や『「消費」をやめる』などの著作で経済成長神話に異をとなえる論客の平川克美さんを対談相手に、小商いの過去・現在・未来について、豊富な実例をまじえて語ります。
行商という生業(なりわい)には、豊かに蓄積されたスキルがあり、いまだ汲み尽くされていない知恵があるのです。
【出演者プロフィール】
山本志乃(やまもと・しの)
旅の文化研究所主任研究員。定期市や行商に携わる人たちの生活誌、庶民の信仰の旅などを調査研究。著書に『女の旅――幕末維新から明治期の11人』(中公新書)のほか、最新刊『行商列車――〈カンカン部隊〉を追いかけて』(創元社)などがある。
平川克美(ひらかわ・かつみ)
リナックスカフェ代表取締役、立教大学特任教授。著書に『小商いのすすめ――「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ』『「消費」をやめる――銭湯経済のすすめ』(ともにミシマ社)、『移行期的混乱――経済成長神話の終わり』(筑摩書房)などがある。
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2016/01/22 Fri -
山本志乃×平川克美
「小商いのいま・むかし、そして未來」
『行商列車 〜〈カンカン部隊〉を追いかけて〜』(創元社)刊行記念
- 07/01 Tue 吉見俊哉×若林幹夫
「建築と出来事」
『このとき、夜のはずれで、サイレンが鳴った』(岩波書店)
『ダイアローグ〈危機〉の時代の長谷川逸子・原広司・伊東豊雄』(millegraph)W刊行記念 - 07/02 Wed 豊﨑由美×木下眞穂
第93回「読んでいいとも! ガイブンの輪」 - 07/04 Fri 富川岳×ドミニク・チェン×桜井祐
「懐かしい異界へ。人ならざるものと共に生きる」
『シシになる。──遠野異界探訪記』(亜紀書房)刊行記念 - 07/05 Sat 岡本敬子×岡本仁
「ふたりへの質問エクストラ 」
『私のふたり暮らし』(光文社) - 07/05 Sat 武田砂鉄×石村博子×舛友雄大
「ノンフィクションの現在地」
Presented by 講談社本田靖春ノンフィクション賞 - 07/06 Sun あきやあさみ×竹村優子
「服と仕事と私~制服化スタイリストと編集者の場合」 - 07/10 Thu 星田英利×フルーツポンチ村上健志×日下怜奈×トット桑原雅人×あわよくばファビアン×ピストジャム
「第一芸人文芸部 俺の推し本。」(BSよしもと)
第13回公開収録 - 07/11 Fri 星野文月×竹中万季×野村由芽
「それぞれの日記のなかにある、人との距離や関係性」
『不確かな日々』(ひとりごと出版)
刊行記念 - 07/12 Sat 西尾康之×斎藤環
「『不死』の時代とは?:アーティストと精神科医が語り尽くす」
『不死』(くま書店)刊行記念 - 07/13 Sun 柴田元幸×惠愛由
「あなたをみている」
『体の贈り物』(twilillight) 復刊記念 - 07/13 Sun 服部円×長崎訓子
「身近なネコをよく知り、
イラストにするワークショップ」
『ネコは(ほぼ)液体である』
(KADOKAWA)刊行記念 - 07/14 Mon 【全6回】連続講座 鈴木涼美「夜の読書室」Vol.3
- 07/15 Tue 松尾潔×丸屋九兵衛
「90年代R&Bとは何だったのか? 」
『松尾潔のメロウなライナーノーツ』(リットーミュージック)刊行記念 - 07/16 Wed 三宅陽一郎×清木 昌
「ゲームデザイン、人工知能、数学――レトロゲームから未来まで」
『数学がゲームを動かす!』
(日本評論社)刊行記念 - 07/18 Fri 阿部恭子×インベカヲリ★
「家族という密室で何が起きているのか」
『近親性交―語られざる家族の闇』(小学館)刊行&重版記念 - 07/22 Tue 周司あきら×杉田俊介
「語られにくいミサンドリー(男性嫌悪)から『男』の話をしよう」
『ラディカル・マスキュリズム』(大月書店)
『男性学入門』(光文社)W刊行記念 - 07/23 Wed 椎名基樹×せきしろ
「バカサイトークライブ」 - 07/24 Thu 米澤渉×ひろのぶと株式会社
「踊る阿呆たちの本づくり」
『踊る阿呆の世界戦略』(ひろのぶと株式会社)
刊行記念 - 07/26 Sat 水上文×清水晶子
「ここにも、そこにも、どこにでも:日本語圏と英語圏のクィアポリティクスを辿って」
『クィアのカナダ旅行記』(柏書房)刊行記念 - 07/27 Sun 太田充胤×山本ジャスティン伊等×山本浩貴
「こんなにも踊りたい、私たちの魂について」
『踊るのは新しい体』(フィルムアート社)刊行記念 - 07/28 Mon 金原ひとみ×朝吹真理子×山中瑶子
「韓国と出会って考えたこと」
新文芸誌『GOAT meets』(小学館)刊行記念 - 07/29 Tue 枝優花×平井珠生
「ラジオでしゃべるって、こんなにむずかしくて、たのしい。」 - 07/30 Wed 梶原阿貴×高橋伴明
「家族とジェンダーと革命」
『爆弾犯の娘』(ブックマン社)
刊行記念 - 08/04 Mon 古賀及子×菊地朱雅子×北野太一×油利可奈
「生活を(書き)続けるために」
『巣鴨のお寿司屋で、帰れと言われたことがある』(幻冬舎)
『おかわりは急に嫌 私と『富士日記』』(素粒社)
『よくわからないまま輝き続ける世界と 気がつくための日記集』(大和書房)刊行記念 - 08/13 Wed 小島雄一郎×吉田将英
「拗らせたおじさん二人が考える『選べない』時代の生き方」
『「選べない」はなぜ起こる?』(サンマーク出版)刊行記念 - 08/31 Sun 小川公代×中村隆之
「この世界を生きるための物語と音楽」
『ケアの物語 フランケンシュタインからはじめる』
『ブラック・カルチャー』(岩波書店)刊行記念