※多木陽介さんはヴィデオ映像での参加となります
監獄は人間の自由を拘束する装置だと思われています。権力に対して自由を主張した人間が監獄に入れられる例は歴史において数限りなくありました。そのとき、監獄は、むしろ自由を標榜するための拠点となりました。逆説的にも、監獄において自由というものの真の意味が示されたのです。翻って、監獄だけでなくテクノロジーや情報による支配・拘束システムを生みだしたいまの社会こそ、監獄そのものではないでしょうか。私たちは、知らぬ間に社会という檻のなかに閉じこめられ、そのなかで幻影の自由という餌を与えられているだけかもしれないのです。
ヘンリー・ソローとサミュエル・ベケット。ソローは19世紀の東部アメリカ人、ベケットはアイルランドーパリと流れた20世紀ヨーロッパの亡命者。まったく違う二人ですが、どちらも社会における「監獄」という制度と比喩に、人間の自由の束縛と、そこからの解放のイメージを同時に鋭く見通した、不思議な精神的連帯を感じさせる二人です。
今福龍太の新著『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』(みすず書房)、そして多木陽介の渾身のベケット論『〈不〉可視の監獄 サミュエル・ベケットの芸術と歴史』(水声社)。この二著の刊行を記念して、ソローとベケットにおける「監獄」について徹底的に考え、技術文明の包囲のなかで甦るべき野生の精神をめぐって今福龍太が語ります。ローマ在住の多木陽介は、今回のために制作したヴィデオ映像によってこれに応答の声を送ります。
私たちはいま、権力の包囲のなかで、どのように自分自身の歴史を書き、自分自身の自由を歌うことができるのでしょうか? 2時間たっぷりの言葉と映像の饗宴をお楽しみください。
今福龍太
1955年生まれ。文化人類学者・批評家。東京外国語大学大学院教授。サンパウロ・カトリック大学客員教授として映像論/偶景論のセミナーを随時担当。また、群島という地勢に遊動的な学びの場の創造を求めて2002年より巡礼型の野外学舎〈奄美自由大学〉を主宰。おもな著書に『クレオール主義』(ちくま学芸文庫)、『ブラジルのホモ・ルーデンス』(月曜社)、『ミニマ・グラシア』『群島-世界論』『薄墨色の文法』『ジェロニモたちの方舟』(以上、岩波書店)、『レヴィ=ストロース 夜と音楽』(みすず書房)、『書物変身譚』(新潮社)、『わたしたちは難破者である』『わたしたちは砂粒に還る』(以上、河出書房新社)などがある。
多木陽介
1962年生まれ。演出家、アーティスト、批評家。1988年の渡伊以来、ミラノやローマを拠点に演劇活動や写真を中心とした展覧会を各地で催す。現在は、展覧会のキュレーション、講演、執筆など多様な方法によって、生命をすべての中心においた人間活動の哲学を探究している。著書に『アキッレ・カスティリオーニ──自由の探究としてのデザイン』(AXIS)、訳書にマルコ・ベルポリーティ『カルヴィーノの眼』、プリーモ・レーヴィ『プリーモ・レーヴィは語る』(以上、青土社)、アンドレア・ボッコ/ジャンフランコ・カヴァリア『石造りのように柔軟な』(鹿島出版会)などがある。
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2016/10/22 Sat -
今福龍太×多木陽介
「監獄からの自由──ソローとベケット」
『ヘンリー・ソロー 野生の学舎』
『(不)可視の監獄 サミュエル・ベケットの芸術と歴史』刊行記念
- 04/03 Thu 木村祥一郎×藤原隆充
「遠まわりをした老舗家業の働き方」
『ちいさな会社のおおらかな経営』(主婦の友社)刊行記念 - 04/04 Fri 北村浩子×マライ・メントライン
「“日本語は難しい”と日本人は言うけれど? 」
『日本語教師、外国人に日本語を学ぶ』(小学館)刊行記念 - 04/05 Sat 清田隆之×大島育宙「正しさの一歩外で考える、「俺たち」と「恋愛」の現在地」『戻れないけど、生きるのだ 男らしさのゆくえ』(太田出版)刊行記念
- 04/06 Sun 栗田隆子×武田砂鉄「「働けない人」と「働けた人」で考える──わたしたちの社会と労働のいびつな関係」『「働けない」をとことん考えてみた。』(平凡社)刊行記念
- 04/07 Mon 藤原ヒロシ×皆川壮一郎×嶋浩一郎
「無駄と余白と奥行きと」 - 04/09 Wed 藤澤ゆき×石田真澄×野村由芽
「手を動かしながら生きていく」
『わたしを編む つくる力を、手のうちに YUKI FUJISAWA制作日記』刊行記念 - 04/10 Thu 藤津亮太×前島賢
「頼まれなくたって、語ってやる!」
『富野由悠季論』(筑摩書房)刊行記念 - 04/11 Fri 宮崎晃吉×川口瞬×内沼晋太郎
「これからの小さな出版と、本の届け方」
『最小文化複合施設』(HAGISO)出版記念 - 04/12 Sat きださおり× 明円卓 × 藤井颯太郎
「What shall we do here? この場所で何するナイト」 - 04/13 Sun 安達茉莉子×長島有里枝
「リアルライフでフェミニズムを生きるわたしたち」
『あなたのフェミはどこから?』(平凡社)刊行記念 - 04/15 Tue 西寺郷太×高橋芳朗「J-POP丸語り」『J-POP丸かじり』(ソウ・スウィート・パブリッシング)刊行記念
- 04/17 Thu ゲッツ板谷×新保信長×原カントくん
「自分のことってどう書けばいいのか? 」
『ともだち』(徳間書店)刊行記念 - 04/18 Fri 土佐有明×石川浩司×蔦木俊二
「イカ天とバンドを続けることとあの頃の話」
『イカ天とバンドブーム論』(DU BOOKS)刊行記念 - 04/20 Sun フィクショネス 文学の教室
『金閣寺』『美しい星』を
3ヶ月かけてじっくりと読む - 04/20 Sun 金川晋吾×柴崎友香×小田原のどか
「80年目、爆心地・長崎の写真と言葉」
『祈り/長崎』(書肆九十九)刊行記念 - 04/21 Mon 甲谷 一×佐藤浩二
「プロデザイナーが考える
“ロゴデザイン”のちょっと深い裏話」
『カンタンでちょっぴり深いロゴづくり』
(エムディエヌコーポレーション)刊行記念 - 04/23 Wed 鈴木涼美×紗倉まな×原カントくん
「動物になりきれない、愛しい人間たちの“欲望”」
『ノー・アニマルズ』(ホーム社)刊行記念 - 04/25 Fri とれたてクラブ×ゆっきゅん×潟見陽「こういう物語をずっと待ってた」『なかよしビッチ生活』(エトセトラブックス)刊行記念
- 04/26 Sat 少年アヤ×なま×野口理恵
「なにでもないわたしでいられますように」
『わたくしがYES』『USO 6』『生きる力が湧いてくる』トリプル刊行記念 - 04/30 Wed 古舘佑太郎×又吉直樹
「旅と文」
『カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記』(幻冬舎)刊行記念 - 05/18 Sun ひうらさとる×小川奈緒
「50代からの軽やかな”旅”と”伝え方”」
『58歳、旅の湯かげん いいかげん』
『伝え上手になりたい』(扶桑社)W刊行記念