ウェブ・サービスnoteにアップした原稿が大きな注目を集め、追加取材と大幅な改訂を経て書籍として刊行された事件ノンフィクション『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)。
多くの時間と莫大なコストがかかる一方、ジャンル全体の売り上げが低迷し、もはや青息吐息だといわれる〈ノンフィクション〉――。そんな中、暗闇の中のロウソクのように「有料のウェブ連載単行本」という経路をたどって誕生した書籍『つけびの村』には、多くの讃辞がおくられています。
――有料記事だから読まれないということはない。内容が素晴らしければ、有料記事でも読者はついてくる。
――文芸の書き手がウェブで力を取り戻したように、ノンフィクションにもウェブから書籍という流れができつつあるのかもしれない。
けれど、本当にそうでしょうか?
大手版元の正社員として週刊誌記者の立場を経験し、現在は『弁護士ドットコムニュース』副編集長を務める〈雑誌ウェブ媒体〉の流れを体現する編集者である山口紗貴子さん。
右手でウェブ媒体『HAGAZINE』編集人、左手で老舗のカルチャー誌『スタジオボイス』の編集や、ひとつの街でしか流通しない『ヴァイナル文學選書』(東京キララ社)を担当する〈ウェブ/雑誌〉並行型の編集者・辻陽介さん。
そして、ひとつの成功体験を得たものの、いまだ悩み多きノンフィクションライター高橋ユキさん、晶文社で紙の本を作り続けている版元編集者の江坂祐輔さん、フリー編集者の立場で『つけびの村』を担当した藤野眞功さんをお招きして、『つけびの村』刊行記念トークイベントを開催します。
〈紙の言葉とウェブの言葉〉、そして二つの世界で作品を出し続けるための方法について、正直に語り合い、言葉を売って生き延びるための道を探します。
【出演者プロフィール】
高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。1974年、福岡県生まれ。九州芸術工科大学卒業後、プログラマーに。2005年、女性の裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。翌年、同名のブログをまとめた書籍を発表。以降、刑事裁判の傍聴を中心に事件記事を執筆している。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『暴走老人 犯罪劇場』(洋泉社)など。
江坂祐輔(えさか・ゆうすけ)
『つけびの村』版元編集者。1977年、東京都生まれ。信州大学大学院地域文化専攻卒(インド哲学)。2005年より春秋社にて編集の仕事を始め、晶文社へ移籍。手がけた本に、松岡正剛『連塾 方法日本』、中村明一『倍音』、『唯識仏教辞典』(以上、春秋社)、小木曽健『11歳からの正しく怖がるインターネット』、坂口恭平『cook』、湯澤規子『7袋のポテトチップス』(以上、晶文社)など。
藤野眞功(ふじの・みさを)
『つけびの村』フリー編集者。1981年、大阪府生まれ。成蹊大学卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に、ノンフィクション『バタス――刑務所の掟』(講談社)、長篇小説『憂国始末』(新潮社)、短篇集『アムステルダムの笛吹き』(中央公論新社)など。フリーランスの編集者としても活動し、横田徹『戦場中毒』(文藝春秋)などを手掛けている。
山口紗貴子(やまぐち・さきこ)
1979年、静岡県生まれ。時々、記者もする、『弁護士ドットコムニュース』副編集長。大学卒業後、出版社に入社し、週刊誌編集部で事件、事故、皇室問題などを取材(主にデータマン)。週刊誌以外にも、書籍編集やティーン誌の中国進出などの事業も担当した。2015年、弁護士ドットコムへ転職。夫と子供の3人暮らし。
辻陽介(つじ・ようすけ)
1983年、東京生まれ。編集者、ライター。早稲田大学在学中よりコアマガジンに勤務し、『ニャン2倶楽部』、コア新書シリーズなどを担当。2011年に性と文化の総合研究マガジン『VOBO』をウェブ上に開設。2017年からはフリーランスとして『STUDIO VOICE』、『BURST GENERATION』、『ヴァイナル文學選書』などの編集に携わり、また芳賀書店運営のwebメディア『HAGAZINE』では編集人を務めている。
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