芸術か、犯罪か──。ストリート・アートやグラフィティ文化は、これまで日本語で批評的に語られることがほとんどなく、あったとしてもこうした素朴な二項対立にもとづく解釈に終始しがちでした。大山エンリコイサムさんの『アゲインスト・リテラシー──グラフィティ文化論』は、そのような紋切り型の問いから離れ、ストリート・アートやグラフィティ文化の現実と歴史をていねいに紐解きながら、その批評的可能性を無尽蔵に引き出そうとする日本で最初の著作です。
一方で同書では、そうした理論的分析を下敷きにしつつも、アーティストである大山さん自身の作品や制作コンセプトについても実例を挙げながら触れられ、きわめて実践性の高いステートメントとしての側面もあります。今回の刊行記念トークでは、合法のグラフィティ壁画事業を長年手がけたのち、現在は千葉県松戸市でまちづくりプロジェクトに取り組む寺井元一さんを対話者に迎えることで、アーティストの立場からもさらに視点を広げていきます。
現代日本においてさまざまな職能からストリート・アートやグラフィティ文化をテーマとする場合、法的観点からの表現の自由の問題や公共プロジェクトの実行における行政とのネゴシエーションのあり方、さらには歴史文化財としてのパブリック・コレクションの可能性についてまで、多角的な議論が予想されます。芸術か、犯罪か──。『アゲインスト・リテラシー』はこの単調な図式を批評的に乗り越えつつも、同時にそれが批評のご遊戯に陥らないよう、社会実践の位相へと投げかけられている書でもあるのです。
そうした意味で本イベントでは、同書の射程を最大値に設定し、そこに書かれていることが社会のなかでどう具体的に活用されうるかを考えていきます。
【プロフィール】
・大山エンリコイサム(おおやま・えんりこいさむ)
美術家。1983年、イタリア人の父と日本人の母のもと東京に生まれる。グラフィティ文化の視覚表現を翻案したモチーフ「クイック・ターン・ス トラクチャー(Quick Turn Structure)」をベースに壁画やペインティング作品を発表し、注目を集める。また、パリ・コレクションでコム デ ギャルソンにアートワークを提供(2011年)、著書『アゲインスト・リテラシー──グラフィティ文化論』を刊行(LIXIL出版、2015年)するなど 活動を広げている。アジアン・カルチュラル・カウンシル2011年度グランティ(ニューヨーク滞在)。現在ニューヨーク在住。
http://www.enricoletter.net
・寺井元一(てらい・もとかず)
1977年生まれ。2002年にNPO法人KOMPOSITIONを設立。表現者に活動の場や機会を提供すべく、ストリートアートやストリートバスケにまつわる事業を行ってきた。
2010年に株式会社まちづクリエイティブを設立し、「MAD Cityプロジェクト」を開始。DIYリノベーションや入居者コミュニティなどの特徴をもつ不動産サービスを軸に、100人以上のクリエイティブ層の移転を実現するまちづくりを行っている。
https://madcity.jp/
http://machizu-creative.com/
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2015/05/23 Sat -
大山エンリコイサム×寺井元一 「ストリート・アートと公共性 表現の自由論からコレクションによる歴史形成まで」 『アゲインスト・リテラシー ─グラフィティ文化論 』刊行記念
- 03/29 Wed 湯浅学×安齋肇×戌井昭人
「カセットに記録された『人生』を聞く」
『ライク・ア・ローリングカセット カセットテープと私 インタビューズ61』(小学館)刊行記念 - 03/31 Fri 坪口昌恭×伊藤ゴロー
「リアルで体験、『神曲のツボ』!」vol.3
『神曲のツボ!「カッコいい」の構造分析』(アルテスパブリッシング)刊行記念 - 04/01 Sat 黒川創×沼野恭子×沼野充義
「世界文学とロシア・ウクライナ」
『世界を文学でどう描けるか』(図書出版みぎわ)刊行記念 - 04/08 Sat 横山北斗×雨宮処凛
「学校で教えてほしかった社会保障――ピンチを切り抜けるノウハウを知ろう!」
『15歳からの社会保障』(日本評論社)
『学校では教えてくれない生活保護』(河出書房新社)W刊行記念 - 04/13 Thu 横道誠×廣岡孝弥
〜韓国ドラマファンクラブ活動〜
「自閉スペクトラム症の当事者と韓国文学翻訳者が語る『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』」 - 04/14 Fri 松澤茂信×村田あやこ×今井夕華×八馬智×上原将太
「いつものまちを“別視点”で見る方法」
『マニア流!まちを楽しむ「別視点」入門』(学芸出版社)刊行記念 - 04/15 Sat 鈴木みのり×竹中夏海×和田彩花
「歌って、踊って、演じて、表現するアイドルのための健康とジェンダー」
『エトセトラ VOL.8』(エトセトラブックス)刊行記念 - 04/17 Mon ひらりさ×藤谷千明
「それでもオタク女をやっていく……のか?」
『それでも女をやっていく』(ワニブックス)
『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(幻冬舎)W刊行記念 - 04/18 Tue 小川公代×伊藤亜紗
「私たちの時代の感受性について考える」
『感受性とジェンダー』(水声社)
『ケアする惑星』(講談社)W刊行記念 - 04/19 Wed 三浦しをん×ジェーン・スー
「我々は『好き』に突き動かされ今日も生きる」
『好きになってしまいました。』(大和書房)
『闘いの庭 咲く女 彼女がそこにいる理由』(文藝春秋)刊行記念 - 04/21 Fri イナガキヤスト×塚崎秀雄
「写真で表現者になるには」
『ぼくたちの大切な時間』(KADOKAWA)
『名画から学ぶ 写真の見方・撮り方』(翔泳社)W刊行記念 - 04/23 Sun 柊サナカ×村上仁一
「本とカメラと写真と」
『天国からの宅配便 あの人からの贈り物』(双葉社)刊行記念 - 04/24 Mon 関口洋平×河野真太郎
「『イクメン』じゃダメなの? 新自由主義とケア」
『「イクメン」を疑え!』(集英社)刊行記念 - 04/27 Thu 関口竜平×内沼晋太郎
「独立書店を開業した私たちがみる「本屋の未来」〜本屋lighthouseという挑戦」
『ユートピアとしての本屋』(大月書店)刊行記念 - 05/10 Wed 緒方英樹×三上美絵
「ドボクって何だ? かわいい土木・ダイナミック土木偉人」
『大地を拓く』(理工図書)『かわいい土木 見つけ旅』(技術評論社)W刊行記念