“ダゲレオタイプは本当に<写真>か?”
世界最古の写真技法、ダゲレオタイプのことを知っているだろうか?写真に詳しいものなら、その言葉をどこかで耳にしたことがあるかもしれない。しかし、実際に見て触れたことのあるものは、それほど多くないはずだ。というのも、ダゲレオタイプは、現在の技術をも凌ぐ極めて精緻な映像を記録できるものの、複製不可能であまりにも非効率的と考えられたため、現在ではほぼ廃れてしまったからだ。19世紀に撮影された膨大な数のダゲレオタイプは、今では美術館や博物館にひっそりと眠るばかりである。
映像のデジタル化が進む現代にあって、そんな最古の写真技術をつかって、作品を作り続ける若き写真家がいる。彼は、大掛かりな機材を抱え、日本と世界を飛び回り、ときにスナップショットをとるかのごとく、ときに強い政治意識をもって、ありふれた日常を銀板に収めていく。単なる時代錯誤か、あるいはなにがしかの必然がそこにあるのだろうか? なにが彼を駆り立てるのか。
写真家/ダゲレオタイピストの新井は、初の写真集『MONUMENTS』で、原発事故がもたらした惨状をきっかけに、福島から広島、長崎へ、さらにアメリカ各地へと旅をしながら、核のモニュメントと、そこに暮らす人々を銀板に収めていった。ダゲレオタイプという鏡をとおして、新井は私たちになにを見せようとしているのか?そこに込められた祈りとは──。
会の前半は、新井によるダゲレオタイプ実演、後半は『MONUMENTS』を巡る対話によって、みなさまを遠い過去から現在へとつづくイメージの世界へ誘います。ぜひ、奮ってご参加ください。
【プロフィール】
新井卓/あらいたかし
写真家・ダゲレオタイピスト。1978年、川崎生まれ。写真黎明期の技法・ダゲレオタイプ(銀板写真)を独自に習得し制作活動を展開、内外の美術館・ギャラリー等で作品を発表しつづけている。これまで、ボストン美術館、森美術館、東京国立近代美術館ほか国内外の多くの展覧会に参加。2014年、英国ソースコード・プライズ受賞。作品はサンフランシスコ近代美術館、東京都写真美術館、ギメ東洋美術館ほかに収蔵されている。
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