ジュリー・オオツカの『あのころ、天皇は神だった』は、『屋根裏の仏さま』(新潮クレスト・ブックス)でPEN/フォークナー賞ほか世界各国で文学賞を受賞した彼女のデビュー作。著者自身のルーツでもある日系人たちが、第二次世界大戦中のアメリカで、強制退去によって住処を追われた史実をもとに生み出された小説です。作品では、カリフォルニア州バークレーに住むある一家のたどった道を通して、強制退去命令により住み慣れた街を出る日、ユタ州の砂漠の中の収容所へ送られる列車の中の様子、生き別れた父親の手紙を待ちながら有刺鉄線の内側で過ごす収容所生活、そして終戦後に帰宅した一家を待っていた現実といった事柄が、リアリティをもって描写されていきます。
また、「女/女の子/男の子/私」という人称名だけで、語り手に名前がないという独特のスタイルで綴られる本書は、「ある特定の家族の物語ではなく、強制収容の憂き目にあった日系人全体の物語、それどころか、特定の民族の血を引いているということだけを理由に生活を根こそぎにされ排除された、すべての家族の物語としても読めるのではないか」(訳者あとがきより)。実際に、近年のトランプ政権の移民政策への批判として、アメリカ本国でも第二次大戦時の日系人収容の歴史が引き合いに出され、本書が読み直されているといいます。この物語が、日本の読者には果たしてどのように読まれうるのでしょうか。
本イベントでは、『屋根裏の仏さま』に続いてジュリー・オオツカ作品の翻訳を手がけた翻訳者の小竹由美子さんと、入念なリサーチと想像力に満ちた作品で、作家・マンガ家として活躍する小林エリカさんをゲストに迎え、歴史的な事象や過去の出来事を小説やフィクションとして語ることの意味と重要性について考えます。
【出演者プロフィール】
小竹由美子(こたけ・ゆみこ)
1954年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業。訳書にアリス・マンロー『イラクサ』『林檎の木の下で』『小説のように』『ディア・ライフ』『善き女の愛』『ジュリエット』(以上、新潮クレスト・ブックス)、ジョン・アーヴィング『ひとりの体で』『神秘大通り』(ともに新潮社)、ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』(共訳/新潮クレスト・ブックス)、ネイサン・イングランダー『アンネ・フランクについて語るときに僕たちの語ること』(新潮クレスト・ブックス)、ジム・シェパード『わかっていただけますかねえ』(白水社エクス・リブリス)など多数。
小林エリカ(こばやし・えりか)
1978年東京生まれ。作家、マンガ家。アンネ・フランクと実父の日記をモチーフにした『親愛なるキティーたちへ』(リトルモア)で注目を集め、小説『マダム・キュリーと朝食を』(集英社)が第27回三島由紀夫賞候補、第151回芥川龍之介賞候補となる。その他の著書に、放射能の歴史を巡るコミック『光の子ども1,2』(リトルモア)、短編小説集『彼女は鏡の中を覗きこむ』(集英社)など。11月下旬、訳書アンネ・フランクハウス編/ 監修石岡史子『アンネのこと、すべて』(ポプラ社)刊行予定。クリエイティブユニット「kvina」のメンバーとしても活動する。http://erikakobayashi.com
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2018/11/23 Fri -
小竹由美子×小林エリカ
「過去の歴史が我がことになるとき」
『あのころ、天皇は神だった』(フィルムアート社)刊行記念
- 11/21 Thu 吉川公ニ×森真紀×住谷知厚
「伝える広報から伝わる広報へ 広報の心とは何か。」
『広報の心』(理工図書)刊行記念 - 11/22 Fri チョ・イェウン×三宅香帆
「新感覚ホラー小説を通じて見る、日韓の文学現在地」
『カクテル、ラブ、ゾンビ』(かんき出版)刊行記念 - 11/23 Sat 一穂ミチ×高瀬隼子
「これからの恋愛のかたち」
『恋とか愛とかやさしさなら』(小学館)
『新しい恋愛』(講談社)W刊行記念 - 11/24 Sun チョン・ジヘ×原田里美×内沼晋太郎
「好きなことを続けていく方法」
『私的な書店─たったひとりのための本屋─』(葉々社)刊行記念 - 11/25 Mon ソ・イジェ×原田いず×大田ステファニー歓人
「読むことと見ることの間で かつて映画を学んでいた日韓の小説家が語る、世界の切りとり方」
『0%に向かって』(左右社)刊行記念 - 11/28 Thu TaiTan×内沼晋太郎
「『人生を編集する』ってなんだろう」
「EDiT」2025年版手帳発売記念 - 11/29 Fri 金原ひとみ×小川哲×スケザネ
「文学は世界をひっくり返せるか」
新文芸誌『GOAT』(小学館)刊行記念 - 11/30 Sat パク・ヘウル×ファン・モガ×inch magazine
「新たなる韓国SFの世界」
『この星を離れた種族』(inch magazine)『地上適応困難症』W刊行記念 - 11/30 Sat 岡野八代×重田園江
「ちいさなケアのみつけ方 いま改めて考えるケアの倫理」 - 12/01 Sun 宮崎智之×高橋久美子
「美しいエッセイについて」
『平熱のまま、この世界に熱狂したい 増補新版』(筑摩書房)重版記念 - 12/02 Mon 吉本ばなな×又吉直樹×バイク川崎バイク×あわよくばファビアン×ピストジャム
「第一芸人文芸部 俺の推し本。」
第七回公開収録 - 12/04 Wed 小池昌代×三角みづ紀×岡本啓
「わたしたちが放課後によみたい詩 」
『放課後によむ詩集』(理論社)刊行記念 - 12/05 Thu 和嶋慎治×志村つくね
「僕の作詞作法─バンド生活三十五年によせて」
『無情のスキャット 人間椅子・和嶋慎治自選詩集』
(百年舎)刊行記念 - 12/06 Fri
絵津鼓×大原扁理
「Wデビュー10周年記念 漫画家と作家が語る、お金と仕事とこれからのこと」
『IRUKA 3』(forbit)
『シン・ファイヤー』(百万年書房)W刊行記念 - 12/07 Sat 堀元見×水野太貴
「ゆる言語学ラジオ本大賞2024 発表会」 - 12/08 Sun 菊地成孔×相田冬二
「映画を奏でるということ」
『クチから出まかせ』(集英社)
『あなたがいるから』(Bleu et Rose)W刊行記念 - 12/09 Mon 横田増生×平山亜佐子「女と男の潜入取材(化け込み)語り尽くし!」『潜入取材、全手法 調査、記録、ファクトチェック、執筆に訴訟対策まで』(KADOKAWA)重版記念
- 12/10 Tue ー『編むことは力』翻訳刊行記念 ー
佐久間裕美子×super-KIKI
「ものづくり(糸・布・針)から考える持続可能な社会運動」 - 12/12 Thu 池上晴之×ムロケン×ウイリアム・ヘイムス「ザ・ラスト・ワルツ見聞録&ロビー・ロバートソンの実像」『ザ・バンド 来たるべきロック』(左右社)刊行記念
- 12/14 Sat きださおり×梨×松澤茂信×小野寺正人
「What shall we do here? この場所で何するナイト」 - 12/15 Sun 藤田雄介×武田清明×権藤智之
「建具談義 Vol.2:建具と構法・部品・流通」
『建具の手がかり』(学芸出版社)刊行記念 - 12/16 Mon 中川淳一郎×ヨッピー×山崎幸治「2024年『都道府県魅力度ランキング』最下位記念! SAGA語り」
- 12/21 Sat 豊﨑由美×広瀬大志
×小島日和×向坂くじら×張文經
×のもとしゅうへい×故永しほる
×小笠原鳥類×平川綾真智
「現代詩フェスティバル 詩の未来へ」
『カッコよくなきゃ、ポエムじゃない! 萌える現代詩入門』
(思潮社)刊行記念 - 01/09 Thu 鳥羽和久×古賀及子
「子どもと私の“観察”のしかた 」
『「学び」がわからなくなったときに読む本』(あさま社)『好きな食べ物がみつからない』(ポプラ社)W刊行記念 - 01/12 Sun 田中さとみ×藤原安紀子×山本浩貴×佐藤文香
「アニメの予告編を眺めるように/詩を書いている」
『sleeping cloth スリー ピング クロス』(左右社)刊行記念