哲学と歴史を架橋し、近代以前の“知のコスモス”に分野横断的に迫るインテレクチュアル・ヒストリー。その魅力を紹介する「bibliotheca hermetica(ヘルメスの図書館)」叢書の第3回配本は、ルネサンス研究の泰斗アンソニー・グラフトンの主著『テクストの擁護者たち』です。
ルネサンス期に成立した人文学は、ホメロスをはじめとする古代ギリシア・ローマの詩や物語、聖書などの古典テクストを読み解いていく学問ですが、古典といわれるものがはじめからあったわけではありません。どれが、どのような基準で選ばれ、残り、古典とされていったのか、その「テクストの科学」の歴史を辿るのが『テクストの擁護者たち』です。
その際、グラフトンは歴史を非合理から合理へとむかう単線的な発展とはとらえません。現代的な価値観から知の山脈を形成する山頂群、つまり「巨人たち」を点と点で結んでいくような記述をとらず、そうした巨人たちの陰に隠れていた、しかし歴史上では重要な働きをした人物たちに光をあてていくことで、当時の混沌かつ豊かな知的環境を描きだします。
また、こうした個別的な事例を丁寧にみていくことと並行して、グラフトンは普遍的な問題――古典から時空を超えた不朽のメッセージを読みとるべきか、それとも古典を歴史の産物として距離感をもって臨むべきか――を提起し、人文学者たちの知的格闘の歴史と成果を明らかにしていきます。
今回は、叢書監修者のヒロ・ヒライさん、訳者の福西亮輔さんにくわえ、グラフトンの作品を愛する久保田静香さんをゲストに迎え、三人でトークをおこないます。インテレクチュアル・ヒストリーに新たな時代をもたらしたといわれるグラフトン流のテクストの読み方、選び方、読書・研究の進め方や翻訳の裏話など、まったく新しい歴史の世界が見えてくる楽しい会になるでしょう。さらに昨今の国立大学における人文学廃止の論争・危機に関して、人文学の価値とは何か、その起源をさぐる本書をヒントに、歴史家の観点からもお話いただきます。
ヒロ・ヒライ
ルネサンス思想史。Early Science and Medicine 誌編集補佐。学術ウェブ・サイト bibliotheca hermetica(略称 BH)を主宰。フランスのリール第三大学にて博士号(哲学・科学史)取得。現在、オランダ・ナイメーヘン大学研究員。著作にMedical Humanism and Natural Philosophy: Renaissance Debates on Matter, Life and the Soul (Brill, 2011)、編著に『ミクロコスモス』(月曜社、2010年)など。ほかに英仏伊語による著作・論文多数。2012年に第九回日本学術振興会賞受賞。
福西亮輔 (ふくにし・りょうすけ)
哲学・思想史。1981年生まれ。東京都立大学大学院修士課程修了。修士(文学)。現在は、高等学校教諭として地理歴史・公民を教えている。おもな関心領域は、マルシリオ・フィチーノやジョルダーノ・ブルーノを中心とする15・16世紀ヨーロッパの哲学・思想史だが、最近はユダヤやイスラームをふくめた地中海世界の歴史・文化にも関心をひろげている。
久保田静香(くぼた・しずか)
フランス文学・思想。日本学術振興会特別研究員PD。法政大学および明治学院大学講師。パリ第四大学にて博士号(フランス文学文明)取得(2012年)。博士論文はDescartes et l’éloquence de la vérité : Les héritages jésuite et humaniste。現在は、ペトルス・ラムスを中心とした16・17世紀ヨーロッパにおける思想と言語の革新の諸相に関心をよせている。
※イベントチケットの予約・購入に関するご案内はこちら。
2015/08/23 Sun -
ヒロ・ヒライ×福西亮輔×久保田静香
「テクストと学問の歴史、そして人文学の意味」
『テクストの擁護者たち:近代ヨーロッパにおける人文学の誕生』(勁草書房)刊行記念
- 01/29 Sun 堀静香×こだま
「なぜ、暮らしを書くのか?」
『せいいっぱいの悪口』(百万年書房)刊行記念 - 02/01 Wed 【参加無料】角田光代×︎田中卓×安並まりや
「『気持ちよく生きるヒントを角田さんと本屋で考えてみる』ウェルビーイングトーク」
presented by Hakuhodo DY Matrix - 02/02 Thu 西田亮介×丹羽充×谷憲一
「『監査文化の人類学』をどう読むか」
『監査文化の人類学』(水声社)刊行記念 - 02/03 Fri 朝日順子×藤本国彦
「ビートルズはインドで何と出会ったのか?」
『インドとビートルズ』(青土社)刊行記念 - 02/04 Sat 高島鈴
「一人称からはじめる蜂起」読書会/第2回
『布団の中から蜂起せよ』(人文書院)刊行記念 - 02/06 Mon 高野光太郎×篠原かをり
「ウォンバット研究者、数奇な人生を語る」
『ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?』(晶文社)刊行記念 - 02/07 Tue 杉山恒太郎×山口周×河尻享一
「杉山恒太郎、広告ビジネスの現在、過去、未来を語る」
『広告の仕事』(光文社)『世界を変えたブランド広告』(日経BP)W刊行記念 - 02/09 Thu 妹尾昌俊×工藤祥子×堀潤
「先生を、死なせない。——教育現場の過労死等を防ぐために」
『先生を、死なせない。』(教育開発研究所)刊行記念 - 02/10 Fri 髭男爵ひぐち君×萩原弘基×栁佐織
「髭男爵ひぐち君の語る日本ワインサロン×塩山洋酒醸造×LIFE with WINE」
『髭男爵ひぐち君の語る日本ワインサロン』(三栄書房)刊行記念 - 02/15 Wed 新井高子×清岡智比古×小島敬太
×管啓次郎×田野倉康一×坪井秀人
「「朔太郎と歩く」詩と歌の夕べ」
『朔太郎と歩く』(明治大学総合芸術系)刊行記念 - 02/16 Thu 太田靖久×友田とん×碇雪恵×竹田信弥
「ZINEを作って届けて、楽しく巻き込む〜3人のアフタースクール〜」
『ふたりのアフタースクール〜ZINEを作って届けて、楽しく巻き込む』(双子のライオン堂)刊行記念 - 02/17 Fri 庄子寛之×西岡壱誠
「これからの時代を生きる子に必要な力」
『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』
『それでも僕は東大に合格したかった』
『東大独学』トリプル刊行記念 - 02/18 Sat 豊﨑由美×若島正
第80回「読んでいいとも! ガイブンの輪」 - 02/21 Tue 平岩壮悟×大林寛×中村将大
「ヴァージル・アブロー『ダイアローグ』のよみかた」
『ダイアローグ』(アダチプレス)刊行記念 - 02/22 Wed 金澤寿和×福田直木
「ライトメロウなプレミアムAORの夜」
『AORライトメロウ プレミアム 02 ゴールデン・エラ 1976-1983』(シンコーミュージック・エンタテイメント)刊行記念 - 02/25 Sat 西寺郷太×伊賀大介×原カントくん
「復活!『いごかんトリオ』(伊賀大介・西寺郷太・原カントくん)1990年代の音楽、ファッション、そして下北沢を語る」
『90’s ナインティーズ』(文藝春秋)刊行記念